先代から引き継いで、協会の会合に出席した時のこと、高齢の社長さんが私のところへ来て懐かしそうな顔をして「あんたのお祖父さんは、月末になると奥さんに内緒でよく金を借りに来たんだ」と笑って話をしてきました。
要するに、若い衆に仕事の後でお酒を振舞っていたのですが、月末になると小遣いがなくなってきて、奥さんには怒られるので、同業者の社長に借りに行き、借りたお金でみんなにお酒をごちそうしていたという事です。お酒はいいですが、要するに奥さんが怖かったのでしょう。
また意外なこともありました。当時、引越の見積であちこちのお客さんを訪ねていた時のこと、名刺を見たお客さんが、「もしかしておたくは・・・の川合さんですか?。あなたの年齢ならお祖父さんになるのかな。知っていますよ。」となりました。
戦前に創業したものの、トラック輸送にかぎらず、様々な交通事業が、戦争に向けて強制的に統合され、個人営業はできなくなった時期がありました。この商売も、地元の通運会社に統合され、祖父はその会社の仕事をする形になりました。戦後になり、一定の時期を経て、なにがしかの権利を得る資格が整った時に、会社から独立することを許されたのです。その時のお客さんは、当時の通運会社の事務職の人で、その頃の手続きでお世話になった人だったのでした。
戦時統合令という時期があったとは、もともと聞いていましたが、その辺の事情はこのとき初めて知ったのでした。