中学校の吹奏楽部時代(当時はブラスバンド部が一般的)に、体育祭の時以外は、延々基礎練習のみの時期から、3年生が引退して、ようやく一つの曲の練習が始まりました。
この時の曲が、ジョセフ・オリヴァドーティ作曲の序曲「ポンセ・デ・レオン」。
ジョセフ・オリヴァドーティはイタリアに生まれ、渡米してオーボエ奏者や指揮をしながら作曲活動をしました。主に吹奏楽作品で知られている人です。吹奏楽では序曲「バラの謝肉祭」がよく演奏されています。
さて、このポンセ・デ・レオンという曲。なかなか勇壮な出だしから変化に富んだ良い曲です。そして真ん中あたりで、曲調が急にプチお花畑状態になり、少しして蝶でも飛んでいるようなメロディに変わるのですが、そこの主旋律がめずらしことにユーホニュームとサキソフォンが担当するのです。
パートごとに個別に練習が始まり、やがて初めての全体合奏をする時が来ました。通しで曲を終えた時のこと。顧問はひと呼吸間をおいてから、全員をぐるりと見回し、「ユーホニューム!」と言ったあと、「お前たちには最高の曲じゃないか!」と。
これはこのユーホニュームというパートをしないと理解できないかもしれませんが、中途半端な、少々極端に言えば僻み根性が出てくる楽器ですので、これだけ活躍する曲ならいいだろうという半ば茶化しでもあるのです。
そして、初めての曲でこれだけ主旋律があるんだから、ちゃんとやれよ、という脅しでもあったわけです。